立ち絵が美しい!5時間以内に終わる同人ファンタジーノベル『fault - milestone one』を紹介するぞ!

f:id:bern-kaste:20160727163631j:plain

 

 

『fault - milestone one』(ディレクターズ・カット版)

 

 

これは私達の現実と陸続きの物語ではない

開始早々、そう認識せざるをえない固有語による固有語のオンパレードによって『fault』は幕を開けた。「クラフト」「カラード・マナ」「風言語」……登場人物たちが口にする言葉の数々は文脈で多少わかるものの、しかし明確な意味は把握できないでいた。

そしてそれらは詳細に説明することなく「クラフト」を前提とした「バトルクラフト」、「マナクラフト」を前提とした「通信ライン」という言葉が撒き散らされていくのである。

また、人差し指・中指・薬指を突き立て小指と親指で握手する「ビルセリオ」という風習があること、サンアリズタ語(仮想言語)でビルセリオは「幸運を」なる意味をもつこと、「セキュール」と呼ばれるルゼンハイド国では誰もが知っている欲の化身の名称を皮肉に使ったりと―――明らかにそこは私達が知らない文化であり、別世界のお話であることが一瞬にして理解できるだろう。

続きを読む

「ネタバレを過剰に気にする人は作品の筋(すじ)しか楽しみ方を知らないのでは?」と問われれば、(8825文字)

f:id:bern-kaste:20160723203520j:plain

 

 

 

1)ネタバレについての指摘

 

以前からこのブログでは、作品に対して一定ラインを超えていたら「ネタバレ注意」と記してきた。かっちりとした区切りはないが「未プレイ者の楽しみを奪う」ような情報を載せていたら「ネタバレ」だと判断することが多かった。

だがこれだと「これくらいのことでも注意喚起するべきことなのか?」と疑問は抱くことになる。さらっと√概要に触れることや、物語中盤から登場するキャラについて指摘することが「ネタバレ」なのかと問われるとそこまでは行かないよなあとも感じていた。

続きを読む

「アニメ化」とはつまり原作の批評行為なんじゃないか?(Fate/stay night)

f:id:bern-kaste:20160724104419j:plain

*Fate/stay nightネタバレ注意

 

 

 

「アニメ化」とはつまり原作に対する批評行為である(4747文字)

 

小説のアニメ化、ラノベのアニメ化、ノベルゲームのアニメ化。それぞれ媒体は異なるものの、まず原作ありきで、その原作をアニメ(映像媒体)へ落とし込むことを「アニメ化」と呼ぶことだと認識している。

この時、原作媒体から映像媒体へただ変換すればいいのではなく、原作を理解した上でそれをアニメで十全に魅せるにはどうすればいいか? という思考の元に行われるはずだ。

でなければ「出来のいいアニメ化」と「出来の悪いアニメ化」という区分が存在することはないし、少なくとも "結果的" に出された作品をもってそれが成功したか失敗したか、原作を理解した上でのアニメ化だったのか?は判断できるだろう。

例えば『Fate/stay night(2006年スタジオディーン制,以下DEEN版)の衛宮邸で行われた土蔵でのランサーVSセイバー戦を思い出して欲しい。大振りで攻撃する剣と槍、やたら「っ」「!!」といった掛け声が発されるものの特別激しい動きはしておらず、闇雲に空中へ飛んだり、意図不明なロングショットを多用したり、止め絵で行われるランサーの猛攻をもさっと凌ぐセイバー。

 

f:id:bern-kaste:20160724105712j:plain

――『Fate/stay night』3話(2006年スタジオディーン制) 

 

 

あの戦闘シーンを見て「これこそが神話の……そう英霊達の戦い!」と思っただろうか? 原作『Fate/SN』をプレイした者は苦い顔をせずにはいられなかったのではないか? 当時2006年と鑑みても「(今の)アニメはこんなもんだよな」「まあ頑張ってるよ」と半ば諦観していたのではないか?

しかし2014年-2015年にかけて制作されたufotableによるアニメ化(以下、ufo版)は「まさに英霊達の戦い」と呼んで相応しいものだったと思う。

セイバーとランサーの戦闘はまず1合2合と武器を交えたのち、相手の様子を探るように画面が一歩引いて全体を捉える。間ができる。その緊張を解放するようにトップスピードで繰り広げられる連撃による連撃の嵐。

 

 

f:id:bern-kaste:20160721003203g:plain

――『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』1話(ufotable)

 

 

この度重なる攻撃・回避のあと、ランサーは「卑怯者め、自らの武器を隠すとは何事か!」と目の前の英霊を非難するのだが、間髪入れず叩き切ろうとするセイバー。

あのとき両者には数mの距離があったものの詰め寄るカットなく、ランサーの位置にセイバーは攻撃をしかける。シュン!といった具合に。これが緊張感のある戦闘を生み出し、冗長さを省くことで一瞬一瞬本気の戦闘をしているのが分かると思う。またあの距離を難なく0にしてしまえるセイバーの戦闘能力も垣間見せることもできた。

反面『DEEN版』でも同セリフ・同シーンが存在するのだが、セイバーの攻撃が視聴者目線では遅すぎて緊張感の欠片もない状態だ。

  • ランサー「卑怯者め!(以下略)」→セイバー攻撃動作に移る(2秒)→ランサーの表情アップになる(0.3秒)→止め絵で移動するセイバー(2秒)→攻撃が当たる

という具合であり、アニメーションの質もさることながら戦闘の勢いを殺すカットを着実に積み上げているなあという気持ちを隠せない。

 

 

f:id:bern-kaste:20160723110840j:plain

――止め絵で移動するセイバー/『Fate/stay night』3話(2006年スタジオディーン制)

 

続きを読む

ゆのはな―ある冬の暖かい物語―(感想レビュー)

f:id:bern-kaste:20160716205425j:plain

 

ゆのはな(PULLTOP)

 

季節は冬。

外に出ればぶるぶると震えてしまう寒さが待っている。手はかじかみ、吐き出す息は白い。手のひらで溶け出す六花を見てはやっぱり冬なんだなあって実感する。すると「この気温は堪えるでしょ?」と声をかけてくれる人がいて「ほら、こっちきなよ」と家に誘われる。

そこはどこか賑やかで、暖かい。実際に部屋の隅々まで暖房が効いており、さらにこたつも完備。卓上にはどんと大きな鍋。見知らぬ人間とぬくぬくしながら(なぜか)わいわいと肉とかネギとか豆腐をつつきあい、酒を呑む。「至れり尽くせりだね」と見つめると「趣味なんだ」と返される。「赤の他人と食事をするのが?」「それも含めて」、とわけもわからない会話にお互いなんとなく笑ってしまう。

ゆのはな』は、そんな人との奇妙な縁に微笑んでしまうような、ある冬の暖かい物語であった。

続きを読む