恋色空模様のどこがダメで、どこを批判したいのか語る①

f:id:bern-kaste:20160510112350j:plain

<恋色空模様・一連エントリ>

 

『恋色空模様』の何がダメなのか、どこが引っかかり批判したいのか語っていく。

今回は「読者の価値観」に優位を置いた意見を提示し、後日「物語の価値観」を踏まえて本作の批判は批判足りえるのか探っていきたい。(以下、外在的な語りなので注意)

続きを読む

戦国ランスは81時間吸われるくらいに楽しい。しかし最後はぐったりする程に疲れてしまうSLG作品でした(褒め言葉)

f:id:bern-kaste:20160520115441j:plain

 

戦国ランス 感想

2006年にアリスソフトから発売された本作は、ランスが織田信長家の影番を務めながら全国統一を目指す『地域制圧型戦略シュミレーションゲーム』である。

北は北海道から、南は鹿児島まで進軍しては地域から金を巻き上げたり、その大金で雑兵施設を建造したり、敵武将を説得して仲間にできる自由度の高さがウリだ。

そして自由度が高いだけではなく、1ターンに2回しか行動できない部分や、敵勢力を知るために[斥候](=投入した味方はこのターン行動不能)する必要がある「制約」の部分もうまい。

「もっといろいろ行動したい」「もっと味方を投入したい」という欲求は中々実現できず歯がゆい思いをするだろう。しかしそれが次ターンの"引き"になっており、「次回は万全の兵力で伊賀に進軍しよう」という具合にあれよあれよと時間を投入してしまうのである。

気付いたら2時間とかザラだ。

戦国ランス』はそんな「できる事とやりたい事が多く」かつ「制約」が咬み合っているのでとても楽しい。楽しいのだが、一気にプレイしてしまうことも多いので土日などはぐったりする程に疲れてしまうこともあった。

一周目を終えたときなんか既に三周目をプレイしているような達成感がそこにはあり、「ゲームクリア後の特典」「別ENDもあるよ」とメッセージが流れても「いやいやもう結構ですから」(結局全END見ましたが)と思っちゃうくらいにヘトヘトになる感じだった。

 

登場人物はみな魅力的

私はランスシリーズは『鬼畜王ランス』しかプレイできていないが、『鬼畜王ランス』時の織田信長/お香さんのキャラデザの比較や、五十六さんほんと変わってないのね(!?)とか、ゼス・リーザスの仲間が登場したときの「お久しぶり」感が味わえたりもした。そういった昔懐かしいキャラクターに加え、徳川家は天麩羅大好きな妖怪たぬきが牛耳っていたり、上杉謙信はもろ女の子だったりと俗説・史実を織り交ぜたユニークなキャラクターたちも必見である。

特に徳川家のたぬき一味はほんっとーに可愛い!最高!なにこの愛玩動物! もう可愛すぎて彼らの各種 [???]エピソードは癒やされたぞ。家康を天婦羅で仲間にしたあと天井裏でスねる忍者たぬきとか、鈴女に馬乗りされて喜ぶ変態たぬきとか、ずっとぐうぐう眠ってる足軽たぬきとかニヤニヤしてしまうじゃないですかこの野郎っ。

特にお気に入りエピは、ランスが眠っているとき自分を湯たんぽにする忍者たぬきのお話。なにこの子……可愛すぎ……可愛すぎっ。私のところにも来てほしいなあ、と切に願うなど。

あと鈴女ちゃんの底知れない包容力や、見当かなみちゃんの簡単に好意抱いてくれないつんつん力、独眼流政宗の愛らしい目玉姿、アギレダちゃんの呆れた表情などとにかく好きになっちゃうキャラが多いこと。

戦国ランス』のゲーム構造からして登場人物の過去・内面は特別掘り下げられないのだけれど、でもちょっとした発言や態度、小話、見た目でお気に入りになりやすかった。これってすごいことだなと思う。

 

カオスな世界観はつまり器が広いってこと

独眼流政宗とその仲間たちのハイコンテキストな会話は私には全く分からなかったけど、分からなくてもいいしわからないなら分からないなりに楽しもうと思えるところもいい。「分からない」ことが障害になりにくいのがランスシリーズの「世界観」だと思う。忍者、魔人、妖怪、和文化、モンスターの生態系、各々の人脈などなど。ごっちゃ煮のなんでもありだからこそあらゆるものを引き受けられる器の広さがここにはある

 

 

おすすめ作品

私は81時間で大まかなCG・エピソード・イベントを見終えたのでゲームを終えた。まだ集めきれてないものも少しあるが、これ以上『戦国ランス』に触れると(楽しいが)疲れてしまうのでやむをえなくといった感じだった。

1周目でぐったりし2周目でげっそりするくらいに疲労感が半端なく――でも楽しい……っ!――の2つに羽交い締めにされる感覚お分かりになるだろうか。この疲労を踏まえてでもおすすめしたくなるSLG作品なので是非やって欲しいなと思う。そしてぐったりしてください。

ちなみに公式HPにて『ボス林のランス日記』という企画記事がわかりやすく(かつ面白く)戦国ランスを説明してくれているので必見。本作がいかなる作品なのかより分かると思う→http://www.alicesoft.com/rance7/special.html

 

私的満足度:★★★★(4.8)
擬似客観視:★★★★(4.5)

 

 

以下、ちょっとした雑感(ネタバレ注意)

続きを読む

『Ruina』おもしろいなあ……

f:id:bern-kaste:20160501170813j:plain

私的満足度:★★★★(4.3)
擬似客観視:★★★★(4.3)

 

Ruina 廃都の物語(以下Ruinaはフリゲ名作という評価は伊達ではなく、とても楽しく遊ばせてもらった。

初プレイ6時間でクリアできる短編RPGだけど、完成度高く、満足度高く、結局4周・4主人公のお話を見届けてしまった。周回するうちに無駄な動きがなくなっていくのかクリア時間がどんどん短縮していくのも面白く、4周目は2時間少しで走り抜けるなど。

ただ最後のほうは同じことの繰り返しでやや気怠げ感あったのだけれど、それでもプレイさせてしまう魔力はすごい。

――ではその魔力の根源はどこにあるのか? 

ずばり「探索の駆け引き」だと思う。

 

 

 

1)『Ruina~廃都の物語~』から引き出されるプレイヤーの欲

 

f:id:bern-kaste:20160521112905j:plain

――ダンジョン内/『Ruina 廃都の物語

 

本作はセーブ&ロードのごり押しが出来ない。街、もしくは一日一回どこでもセーブできるアイテムを使わないとセーブが出来ず、リセットの繰り返しによる攻略は否定されている。

セーブがしにくいということはイコールで全滅の可能性が格段に上がるし、また「大胆な行動」も取りずらい。間近に控えた強敵との戦い、ダンジョン探索の更なる進行、罠かもしれない宝箱を開けるかどうか………そんな「死ぬかもしれないシーン」でHPギリギリだったり回復アイテムが底をつこうとしていたらリスクある一手を打とうとは中々思わなくなる。

だから臆病者は「街⇔ダンジョン」の往復で安全安心に冒険することになるだろう。2つの区間を往復する煩わしさはあるが、常にセーブし続ければリスクは極限まで抑えられるからだ。

しかし『Ruina』では「TTEXP」なるシステムが導入されている。

これはダンジョンで得た経験値の「通算量」を表したものであり、規定された数値を超えるとボーナスとして「SP」が貰える。

この「SP」は称号――いわばジョブ――Lvを上げるために必要なもので、称号Lvがればキャラステータスは上昇しかつ多彩なスキルを憶えられる大変貴重なものになっている。

例えば「TTEXP」のノルマ値が200だとしよう。ダンジョンでモンスターを倒したり、イベントで得た経験値が200ポイントを超えるとSP1ポイントがもらえるという仕組みだ。そしてここがキモだが、一度でも街に戻れば溜まっていたTTEXPは0に戻る。経験値は減らないが、通算量はリセットされてしまうのである。

このシステムによって街に戻るのが躊躇うように設計されており、SPをゲットしたい!というプレイヤーの「欲」をうまく引き出しつつ探索は可能なかぎり探索し続けよう!という行動を取らせてしまう。

  • ①セーブのしにくさ
  • ②TTEPシステムの導入

この2つによって「安全」は剥ぎ取られ、探索は「リスクある探索」と生まれ変わり、冒険が文字通りの「冒険」として機能しはじめる。ダンジョンに潜れば常にHP/MPの残量を確認し「このまま進むべきか?それとも街へ戻って一度体制を立て直すべきか?」と判断をしつづけ、それが違えれば仲間の命を危険に晒しつぎ込んだプレイ時間をドブに捨てることもある。あるいは臆病風に吹かれて街に戻ってみるものの、実際は戻らないほうがよりTTEXPをタメられたなんてこともざらだ。

この手に汗握る緊張感、探索による駆け引きが『Ruina』の醍醐味であり、また何度もプレイしてしまう魔力の根源だと思う。

例え2周目でどう進めばいいか、選択肢はどれを選べばいいか分かっていても、TTEXPは一体どこまで貯められるのか挑戦してみたくなるし、回復アイテムが底をついた状態でもっと通算量を貯められるのではないかと欲をかいてパーティー壊滅ということもある。ダンジョンが既知でも壊滅の危機にプレイヤー自ら向かってしまうこのsystemは本当面白い。

これに加え、本作はサーガ的世界観・キャラ毎のイベント・ゲームブック風の作品外形も魅力的でありそれは実際にプレイして味わって欲しい。

興味あればどーぞ。

DL先→Ruina 廃都の物語:無料ゲーム配信中!

 

 

 

※ここからは本作の感想。ネタバレ気にする人は見ないほうがいい

続きを読む

累計800,000ダウンロードされた『NOeSIS』の文章レベルが低くてGiveUpしたお話

f:id:bern-kaste:20160212183016j:plain

 

 

(1)NOeSIS 感想

 

2016年2月に『NOeSIS〜嘘を吐いた記憶の物語〜』(以下NOeSIS)をプレイしたのだけれど、その文章力の低さに思わず投げ出してしまった。結局、全4章中1章しか読み進められなかった思い出がある。

ノベルゲームにおける「文章」を「物語を牽引するオブジェクト」と定義すると、『NOeSIS』はその牽引力の低さによって表現されている「物語の中身」「世界観」に触れる前にストレスを憶え拒絶してしまうものになっている。プレイヤーを物語の最奥まで引っ張ってくれるはずの牽引オブジェクトはその役割を果たさず、むしろ、躍起になってこちらの読みを妨害してくるようでさえあった。

例えば、これは妹ちゃんがパロールについてお話している所。

 

f:id:bern-kaste:20160420195018j:plain

f:id:bern-kaste:20160420195016j:plain

f:id:bern-kaste:20160420195015j:plain

 

――千夜の章前編/NOeSIS〜嘘を吐いた記憶の物語〜

 

もしかしたらこれだけでは、「別段普通じゃない?」とか「ちょっと日本語が不自由だけど読めるよ」とか思うかもしれない。私もそう思う。けれどサブリミナル効果よろしく大量に積層したこのテキストを読むとなると潜在意識下に負荷がかかって読めなくなっていくのだ。一つ一つの文章のレベルがどうのこうのというよりは、全体としての文章の牽引レベルが低いと言うとしっくりくるだろうか。

本当に読み進めるのが辛かった。今まで「文章」を原因にして「途中で作品を放り投げる」ことはなかったんだけど『NOeSIS』はうーん……ってなってしまった。今からでも再プレイするか?……と考えるものの↑の文章を数分読んでやっぱムリ。キツイ。それくらい『NOeSIS』は作品外形(=文章)がストレスなので、作品がつまらないつまらなくない以前の問題なのである。

逆にいえば、この文章そのものを別チームが書き直したり、あるいはアニメ化という映像作品によって作品外形を別物へ換装したならば楽しめちゃうことだってあるかもしれない。

繰り返すが、私が不満を憶えたのはその「作品外形」なのである。物語の中身には言及していないし、物語の中身に言及できなくしたテキスト自身を指摘している。

私に合わなかっただけなのかなーと思いつつ、どうもそういうことではなさそうなのでそこらへんも語っていきたい。

……

というか、そもそも『NOeSIS』って何?  

 

 

 (2)『NOeSIS』(ノエシス)って?

続きを読む